【薬剤師が頑張って解説】動脈硬化とLDLとTGと炎症の関係

動脈硬化のメカニズムとリスク
動脈硬化のメカニズムとリスク

こんにちは、薬剤師のODAです。

動脈硬化という言葉は、よく耳にされると思いますが、

動脈硬化がどのようにして起こるご存じですか?

今回は、動脈硬化がどのように起こって、

どのような生活が動脈硬化を引き起こすリスクが高いのかについてお話しようと思います!

目次

動脈硬化の始まりはプラークの形成から

動脈硬化の始まりはプラークです。

⇐プラークの模式図

プラークの原因はsmall dense LDL

直訳すると小さくて重たいLDL

これが血管の隙間に入り込む

プラークの中身はsamll dense LDLが持っていた脂質です。

この脂質が酸化されて、周りの組織ごと変質をしてしまった成れの果てが動脈硬化です。

これを引き起こすのが貪食細胞マクロファージ君です。

マクロファージ君は加水分解攻撃が得意ですが、加水分解では脂肪はちぎれません。

酸化で変質しやすいのは不飽和脂肪酸です。酸化攻撃を受ける二重結合があるからです。

ちぎれないまま酸化された脂質を抱えて処理できなくなったマクロファージは、

残念ながら泡沫細胞という脂肪の塊になります。

ちなみに、マクロファージは炎症の中心選手です。炎症はアラキドン酸で活性化されます。

アラキドン酸はリノール酸カスケードで簡単にリノール酸から作られます。

リノール酸は不飽和脂肪酸です。そして、炎症を消退させるのは、EPA・DHAです。

だから、動脈硬化はリノール酸を減らして、EPA・DHAを摂取するのが有効なのです。

聞きなれない単語の羅列になりましたが、分かりましたかね・・・?

分かりにくいと思うので、順に説明していきたいと思います!

プラークをつくるのはsmall dense LDL

プラークを作るのはsmall dense LDLつまり小さくて重いLDLです。

と言われても、「???」にしかなりませんよね?

血液検査で出てくるLDLの中に実はまた種類があるのです。

まず肝臓でVLDLという、脂質(TG)をたっぷり抱えた大きなリポタンパク質が作られます。

このVLDLはTGをたっぷり含んだ風船だと思ってください。

VLDLは身体のあちこちでTGを配っていきます。中身がなくなるので、

どんどん小さくなっていきます。そして、LDLという大きさのリポタンパク質まで縮みます。

LDLという大きさまで縮むと、LDL受容体という門から細胞の中に丸ごと取り込まれて、

LDLはその役目を終えます。その間の血中滞在時間は2~3日と言われています。

つまりLDLは細胞のエネルギー源や脂肪として蓄えられます。

⇐血管構造の断面図

一番内側の内腔の1層外に

脂質が溜まったものがプラーク

普通のLDLは入りこめない

small dense LDLは入り込める

問題は、LDLがスムーズにLDL受容体から細胞に取り込まれなかった場合です。

スムーズに取り込まれなかった場合、さらにTGを配り続けます。

すると、通常のLDLより小さくなりますよね?

これがsmall dense LDLです。血中滞在時間は3~5日と言われています。

LDLの血中滞在時間が長くなる理由

では、なぜ血中滞在時間が長くなるのでしょうか?

それは大きく分けて二つの理由があります。

一つは、家族性高コレステロール血症です。

家族性高コレステロール血症

・遺伝的にLDLコレステロールの数値が高くなる病気

・原因はLDL受容体発現遺伝子の欠損でLDL受容体の数が少ないため

・片親からの遺伝のヘテロと両親からの遺伝のホモの二つのタイプがある

・ホモ型は難病指定されている

LDL受容体がそもそも少ないために、LDLが血中に残りやすいのです。

そのため、LDLの血中滞在時間は伸び

small dense LDLを生じやすいということになります。

もう一つは、インスリン抵抗性がある状態です。

インスリン抵抗性

・インスリンが十分に血中に存在しているのに細胞がグルコースを取り込まない状態

・原因は細胞側の脂肪の許容量が限界を迎えているから

・インスリンの分泌が十分であるにも関わらず高血糖となる

・脂肪細胞は大人になってからは増えないので、脂肪の許容量には限界がある

つまり、細胞の脂肪の許容量が限界に来ているときですね。

まあ、許容量がいっぱいになっているのに、さらに脂肪を受け取るわけがないですよね。

これは肥満と関係するのですが、問題は見た目では分からないということです。

なぜなら、大人になると脂肪細胞の数が増えないためです。

脂肪細胞の数が増えないのだから、脂肪の許容量も増えません。

脂肪細胞の多い人は脂肪の許容量があるので、見た目は太って見えるでしょう。

逆に脂肪細胞が少ない人は脂肪の許容量が少ないので、太っては見えにくいでしょう。

さて、どちらのタイプがsmall dense LDLが出来易そうですか?

動脈硬化の原因は酸化された脂質とマクロファージ

やっと本題の動脈硬化ですが、実はプラークが出来ただけでは、動脈硬化にはなりません。

プラークには安定型と不安定型があり、

不安定型では炎症が起きているとこの記事でお話しました。

ここで出てくるのが貪食細胞マクロファージ君です。

⇐貪食細胞マクロファージ君

免疫細胞、白血球の一種

主に死んだ細胞や異物の後処理係

加水分解酵素で相手をバラバラにする

その後、捕食して分解を行う

炎症は免疫細胞が、敵を駆逐したり、消毒をしたり、再構築をする一連の現象です。

プラークの中のLDLは酸化されて、異物とみなされ、攻撃されて貪食されるのです。

ちなみに酸化自体はどの段階でされているのかはよくわかりませんでした。

血液中に存在していると書いてある文献もありますし、

免疫細胞に過酸化攻撃を受けて酸化するというのもありました。

マクロファージは脂質を処理できない

マクロファージ君の役目は、敵を加水分解攻撃をして分解して、貪食処理することです。

問題は、通常、処理するのは細菌やウイルスの残骸などのタンパク質の塊だということです。

脂質に加水分解攻撃をしても分解できず、貪食しても処理できないのです。

⇐泡沫細胞

脂質を貪食したマクロファージ

抱え込んだ脂質を処理できない

この状態でプラークに滞留することになる

まとめると、

まずプラーク内にsmall dense LDLが溜まります。

プラーク内の脂質が異物とみなされ、炎症として免疫細胞に攻撃されます。

最終的にマクロファージ君が異物とみなした酸化LDLを貪食します。

でも、マクロファージ君の力では分解処理できず、逆に死んでしまい、

泡沫細胞という動脈硬化の原因物質となる!というわけです。

ここまでが動脈硬化の一連の流れです。

本当の悪の元凶は・・・?

さて、たくさん単語が出てきたところで、キーワードを振り返りましょう!

ここまで出てきたキーワード

・プラーク
・small dense LDL
・脂肪の許容量
・酸化LDL
・炎症
・貪食細胞マクロファージ君
・泡沫細胞

こう挙げた時に、何が一番悪いかと言われると、small dense LDLですね。

さて、LDLはそもそも何をどうするものだったでしょうか?

そう、肝臓で作られ、TG(トリグリセリド:中性脂肪)を運ぶ

トラックのような、しぼむ風船のようなものでしたね。

では、TGには種類はあるのでしょうか・・・?

酸化されやすいsamll dense LDLとは?

必須脂肪酸だけれど過剰になっているリノール酸とは

・体内で合成できない、主にサラダ油に含まれる不飽和脂肪酸
・二重結合を分子内に2つ持ち酸化されやすい(多価不飽和脂肪酸)
・リノール酸カスケードと呼ばれる反応で、アラキドン酸へと変換
・アラキドン酸は炎症に必要な生理活性物質の主原料

以前は、TGに動物性の脂肪酸があると、LDL粒子数が増えて、

small dense LDLが増加すると想像されていたのですが、

最近の研究で、実はTGにリノール酸が多く含まれると、肝臓で作られるLDL粒子数が増えて、

取り込まれ損ねたLDLが長時間血管のなかに留まることによって、

small dense LDLとなっていることが、判明してきたのです。

リノール酸をTGに多く含むLDLは上述のように酸化されやすいです。

そして、リノール酸はアラキドン酸の原料であり、

過剰に産生する原因ともなっているわけです。

遊離アラキドン酸が増えれば、炎症は起こりやすく長引きやすい。

つまり、リノール酸過多が動脈硬化の最大の原因だったのです。

動脈硬化のリスクが高い人とは?

では、リスクが高い人はどんな人でしょうか?

動脈硬化のリスクが高い人

・リノール酸を過剰に摂取していて若い頃より体重が増えている
・炭水化物を過剰に摂取していて若い頃より体重が増えている
・若いころに痩せていたが、今は体重が増えている
・リノール酸に拮抗するα-リノレン酸の摂取が少ない人
・炎症消退効果のあるEPA・DHAの摂取が少ない人

つまり、昔は痩せていて、脂肪の許容量が少なく、

揚げ物やリノール酸が多い炭水化物の摂取で若い頃より体重が増えた人です。

気を付けたい隠れリノール酸

・ショートニングやマーガリンなどのサラダ油由来の加工品
・上記加工品をつかった、パン・ケーキ・お菓子
・サラダ油を乳化しているコーヒーフレッシュ
・リノール酸で揚げたスナック菓子や即席麵

どうですか?心当たりはないですか?

α-リノレン酸を摂っていますか?魚油が摂れるような食事をしていますか?

動脈硬化を遠ざける身体づくり

ヤバいなと思った方!まずは秒で痩せましょう!

とりあえず、痩せて脂肪のキャパを増やすのです。

今回は動脈硬化でしたが、もちろん動脈血栓のリスクは同じですからね!


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痩せて体中の蓄積したリノール酸を排出したら、

今度は、二度とリノール酸をため込まない食事をしましょう!

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上記に挙げた隠れリノール酸が多そうなものは排除しましょう!

多価不飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:飽和脂肪酸 = 1 : 1.5 : 1

この食生活を目指しましょう!

そして、定期的な魚油(EPA・DHA)の摂取です。

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動脈硬化は起こってしまうと、おそらくずっと爆弾を抱えた状態になると思います。

動脈血栓もそうですが、大動脈解離もとても怖いです(めちゃくちゃ痛いらしいです)。

2021年に漫画家の三浦建太郎さんがこの病気で亡くなられました。

10代から読んでいた漫画だったのでとても衝撃でした。

私の知り合いにも、60代で亡くなった方もいらっしゃいます。

スレンダーで、とてもダンディでスポーティなゴルフのとても上手な方でしたけれど。

打ちっぱなしの練習中に亡くなられたと聞きました。

喫煙も大きなリスクです。

知人の腎臓の大学病院の先生は、腎臓を解剖したら、喫煙してたかどうか一発でわかるよ!

とおっしゃっていました。それだけ血管に跡が残るようです。

とりあえず、リノール酸過多の肥満に自覚のあってLDLが高い人

特に若い頃、痩せていた方は、すぐに対応に取り組むことをお勧めいたします。

糖尿病の気がある人は、マッハで取り組んでください。

まとめ

  • 動脈硬化の始まりはプラークの形成から
  • プラークを形成するのはsmall dense LDL
  • 動脈硬化の原因は酸化LDLとマクロファージ
  • small dense LDLを増やして、酸化LDLの原因となるのはリノール酸
  • リスクが高いのは、リノール酸を過剰に摂っている食生活と処理できない生活習慣
  • 動脈硬化のリスクに気づいたら、すぐに対応しないと大変なことになる可能性がある

というお話でした。

結局は、食事と生活習慣なのです。だから、生活習慣病と呼ばれるのです。

生活習慣病は生活習慣を治す必要のある病気だから、治すのが難しいのです。

私の記事が世の中の一人にでも役に立てればなと思っています。

知るだけで、変わること変えられることがあると思うので。

この度は、長文をお読みいただきありがとうございました!

もしよろしければ、今後とも応援のほど、是非ともよろしくお願いいたします!

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ODA 未来を創る薬剤師未来を創る薬剤師
メカニズム解明が大好きな薬剤師。もと有機化学の研究者。10年ほど現場の薬剤師と管理職を経験。病気等のメカニズムを分かりやすく伝えようと奮闘中!趣味は食べ物や化粧品の成分を考察すること。運動はするけれど、ある物が原因で脂肪肝・・・